和紙に現れるシミの様な褐色の斑点模様って何?
和紙を使った作品や古書、保存資料などを見ていて、「茶色い斑点がぽつぽつと出てきた…」という経験はありませんか?
それ、もしかすると……「フォクシング(foxing)」かもしれません。
今回は、和紙に現れるこの不思議な斑点模様の正体と、その原因、そしてできるだけ避けるための工夫についてご紹介します。
1、フォクシングって何?
フォクシングとは、紙に現れる茶色や褐色の斑点模様のことです。
この名前は、斑点の見た目が“狐(fox)”の毛並みに似ていることに由来しているそうです。
地域によっては「星(ほし)」と呼ばれることもあります。
見た目はシミのようですが、カビの一種だったり、紙に含まれる鉄分が酸化したことが原因とされていて、その両方が関係しているとも言われています。
ただし、いろいろな説があるものの、実はまだはっきりとした原因は解明されていないのが実情です。
2、なぜ和紙に多く見られるの?
和紙はフォクシングが出やすい傾向があります。
その理由のひとつが、「紙を抄く機械(抄紙機)の材質」です。
多くの和紙工房では、紙の自然な風合いを保つために鉄製のロールを使用しています。
この鉄分が紙の中に微量ながら入り込み、時間の経過とともに酸化しやすくなることで、カビの発生リスクも高まると考えられています。
一方で、洋紙用の抄紙機にはステンレス製のロールが使われることが多く、鉄の混入が少ないため、フォクシングは起こりにくいとされています。
3、フォクシングは防げるの?
完全に防ぐのは難しいものの、リスクを軽減する方法はいくつかあります。
◆ 1. フォクシングが出にくい和紙を選ぶ
製紙メーカーによっては、フォクシングの発生事例を記録・管理しているところもあります。
ご購入前に販売店や代理店などにフォクシングの発生実績を確認し、用途に応じた和紙を選ぶことでリスクを抑えられることがあります。
◆ 2. 保存環境を見直す
フォクシングの主な原因であるカビは、湿気を好みます。
紙を保存する際は、湿度の高い場所を避け、できれば温度・湿度管理された環境で保管するのがおすすめです。
適度な量の除湿剤を使ったり、風通しの良い場所を選ぶだけでも効果があります。
4、まとめ:和紙の美しさを保つために
フォクシングは、和紙ならではの製法や風合いが引き起こす自然現象のひとつです。
完全には防げなくても、紙選びや保存方法を工夫することで、リスクをできるだけ抑えることができます。
和紙の魅力を長く保つためにも、「なぜ起きるのか」を知っておくことはとても大切です。
作品づくりや紙選びの参考になれば嬉しいです。
(K)