クルクルしないけどスピンの話
皆さんは、「スピン」と聞いて思い浮かぶのは何ですか?
車が雪道でスピンしたとか、フィギュアスケートの選手が、氷上を片足でクルクル回転するのもスピン。ドラマや映画などで、最近よく聞くようになったのは、スピンオフ。スピンオフは人気のある作品のから派生してできた作品のことで、本編で脇役だった登場人物が主役として描かれたりすることが多いように思います。スピンにはクルクルと回転するという意味があり、物が回転すると遠心力によってくっついていた物体が離れることから、スピンオフは、予期せず生まれた「副産物」や「派生物」を指すようになったそうです。ビジネスでは、企業が部門を切り離して、別会社を作ることをスピンオフと言うのだとか。
実は身近に、意外な「スピン」が隠れているのをご存じですか。スピンはスピンでも回転はしません。書籍の専門用語で、本や手帳などについている、あのひも状のしおりにはスピンという名前がついているのです。

回転させるわけでもなく、するわけでもなく、なぜスピンなのかが気になりますが。
昨年、河出書房新社から創刊された“オールジャンル”を標榜する雑誌の名前が「スピン」です。『忙しなく流れる日常に「栞」のように挟まり、読者の日々に少しの「回転・変化」をもたらす雑誌を目指します』との意でつけられた名前だそうです。栞と回転とをかけた面白いネーミングですよね。
このスピンと言う雑誌、「紙の過去・現在・未来を考えています」との事で、紙の専門商社竹尾さんとコラボをしています。そんなわけでこの雑誌、ほかの雑誌とちょっと違っています。違うのは中身の話ではなくて、紙。現在庫限りになった紙や新製品の紙で、雑誌の表紙と目次の資材(紙)を作っているのです。それも毎号違う紙で。その号に使用した紙の名前や特性を紹介するちょっとしたコーナー「紙のなまえ」も掲載されています。

「現在庫限りになった紙」を本当に使用している為、第1号が増刷になったときには、初版と同じ表紙の紙の在庫がすでになく、第2版は別の紙を使って増刷分を作ったそうです。これも在庫限りの紙ならではですよね。
現在販売している5号には、「紙の話 特別編」という記事も掲載されています。

紙にご興味のある方は、書店で見かけたらぜひ一度お手に取ってみてはいかがでしょうか。季節ごとの出版で、16号限定で刊行だそうです。
スピンからの、ゼロ・ウェイストで環境にやさしい雑紙ならぬ、雑誌のお話でした。
この雑誌をきっかけに紙に興味を持ってくれる方が増えればいいなぁ……と紙好きな私は切にそう思うのでした。 S
河出書房新社 雑誌 スピン
https://spin.kawade.co.jp/editors/285/