万年筆のここちよさ

数年前から万年筆を使っています。
いい年齢の大人になったら万年筆は使うもの、という勝手な思い込みから使い始めました。

買おうと決めたその時に思ったのが、そもそも万年筆はどこで買えばいいのか?ということ。街の文房具屋はもう無いし、駅ビル内の文具屋は心許ないし(ごめんなさい)、かといって銀座伊東屋まで行く勇気も無いし。そこで頭に浮かんできたのが「アメ横」でした。

アメ横は子供のころからなじみの深い場所で、ガード下のぎゅうぎゅうに並んだ店舗のどこかに万年筆を売っているお店があったような気がしたのです。そしてその勢いをもってアメ横に行ってみると案の定、ジッポライターの横に万年筆を売っているお店に出会いました。事前に何も調べずに行ったので、お店の人に「万年筆デビューであること」「安からず高からずの予算であること」を伝え、パーカーの万年筆を選んでもらいました。アメ横はお店の人と会話を楽しんで買い物をする場所です。試し書きをしながら、インクの交換の仕方やお手入れ方法などを聞き、初心者なのでブルーインクは辞退して、そして少し安くしてもらって無事万年筆は自分の物になったのです。

まずは当社のオンラインショップでご購入頂いたお客様へ添える一筆箋に使ってみました。力の入れ加減に少し困惑しながらも徐々に慣れ、オンラインショップでご注文が入るたびに大人な気分になれるので、ちょっと嬉しくなったものです。オンラインショップの売れ行きが思わしくない時などは数日キャップを外さないときもあったので、すぐにインクが乾いて書けなくなってしまうこともその時に知りました。するとアメ横のお店で教えてもらったようにペン先を水に浸して復活させ、それからは乾き予防のため毎日、日記を万年筆で書くようにしました。また同じ頃インクを吸い取る「吸い取り紙」を使うことも覚えました。コレクト社製のブロッターで。

最近便箋で手紙を書く機会があり、これこそ万年筆の出番とばかりに張りきって書いてみたのですが、何かいつもと違う書きごごちに戸惑い、書き損じばかり。万年筆は紙によって全く書きごこちが違うのです。書きごごちの差を音で表現してみると、オンラインショップの商品に添える当社のマーブル紙の一筆箋は「ザラザラ」、日記帳は「サラサラ」、ちょっとお高めの便箋は「シャリシャリ」という感じ。どれも書きごこちも聴きごこちも違うのですが、どれも「ここちいい」のです。

使っている万年筆が同じなので、この違いは「紙の個性」ということなのでしょう。紙には数えきれないほどの種類があります。その紙ごとに書きごごち、聴きごこちが違うのではないかと思うとなんかゾクゾクしてきます。いい年齢の大人になったのに。

(T)

コレクト社製のブロッターとマーブル紙のステーショナリー